SDGs経営が浸透し、その速度はここ1〜2年で急激に加速しています。それはSDGsを盛り込んだ国連合意文書「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」の題名にある通り「変革」に役立つからです。今や「●X」の時代。CX「カスタマー・エクスペリエンス)、DX(デジタル・トランスフォーメーション)、GX(グリーン・トランスフォーメーション)、HX(ヒューマン・トランスフォーメーション)、D&I X(ダイバーシティ&インクルージョン・トランスフォーメーション)、これら5つの「X」を総合化して変革するSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を事業を通じて実践することが重要になってきます。ますます変革志向・未来志向のSDGsを経営の各要素(ヒト・モノ・カネ・情報)のすべての面で活用することが必須になっています。これまで様子見の姿勢を見せる企業も少なくなかったのですが、DCMホールディングスはいち早く経営主導で広報・CSR室中心のタスクチーム(SDGs推進タスクチーム)を立ち上げ、5つの「X」の要素を整理し始めましたので、これから、徹底的に本業へビルドインさせることが重要です。
DCMグループのプロジェクトは、「衛生やくらしのクリーンネス」、「購入者へのアフターサービス」、「地域になくてはならない存在(ホームセンター)を目指す」、「働き方改革」など、SDGsのゴールに直結するものが数多く見受けられます。マテリアリティ重要度マップでは、右上にいくほど重要項目であることがわかります。項目も緻密で、社内のプロジェクトとリンクさせている点も評価できます。
8つの重点課題は定番的なものではありますが、事業内容への落とし込みがうまく整理されており、非常に良くできています。特に、SDGs との関係で「ESG/SDGsマトリクス」をターゲット・レベルまで落とし込んで作成したことは大きな前進です。今や SDGs の認知度も上がり、ゴールレベルでは差別化はできないからです。
まず、特定した重点課題とマトリクスをいかに社外へ発信していくかが重要です。ガバナンスもしっかりしていて、SDGsをE、S、Gすべての面で実践している「SDGs経営の会社」として発信していけば、投資家に向けたIR面での訴求力が高まります。
また、DCMグループの取引先にあたる日用品や部品を製造する企業もSDGs経営企業が増えているので、「ぜひDCMさんとSDGs連携で売りたい」と思ってもらえる効果があります。SDGs仲間の集合となっていけば、次はサステナブルを意識した商品や売り場の開発といった協働につながっていく。その先進的な取り組みが広く知られるようになれば、じきにほかの企業からも提案が来る。御社が好循環の起点となり、ますますイノベイティブな企業になっていくでしょう。これがSDGs目標17「パートナーシップ」の効果です。
今後、DCMグループ独自のカーボンニュートラル時代への提案として、マテリアリティ重要度マップにある脱炭素に関する項目のグループを抽出し、「カーボンニュートラルパッケージ」として訴求するのも一手です。カーボンニュートラルにフォーカスして、クライアント向け、顧客向け、自社内など3グループに整理してCO₂対策を打ち出し、SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」に紐づけて的確にアピールしていくことで、一目置かれる企業となるでしょう。
全国展開しているリアルな店舗も活用するべきです。コロナ禍の中で顧客の価値観がサステナブルなライフスタイルに向いている今、DIYの注目度はとても高い。顧客の意識にDIYがフィットするよう、SDGsを使って共感を招くような打ち出し方を意識すると良いでしょう。また、例えば、農業関係、園芸売り場はSDGs目標2「飢餓をゼロに」の項目にある「持続可能な農業」に紐づけられます。このように貴社のホームセンターはSDGs該当項目が多いことを、ぜひアピールしてください。社員はもちろん、売り場で案内をするアルバイトの方にとってもSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の機会になります。
また、社内でも、重点課題に対する理解度を深め、浸透させる取り組みも行ってください。社員一人ひとりが「あのプロジェクトはこのSDGsのゴールに紐づくのか」と把握しやすいですし、日々の業務の中でSDGsができているという意識が高まります。特に、今は「社会意義のあることをしたい」と考える若者が多いので、優秀な人材を確保するという点においても評価が高まります。
東証の新市場区分であるプライム市場への選択申請にあたり、DCMグループにとって今後サステナビリティの重要度は一層高まります。SDGsを経営の本丸に据え、収益につなげられるビジネスモデルの構築を早期に進められると良いでしょう。