人的資本経営

事業戦略と連動した人事戦略

 当社は「Do Create Mystyle くらしの夢をカタチに」の経営理念のもと、豊かなくらしを総合的に提供する「生活快適化総合企業」への変革を目指しています。役割を明確にした店舗戦略、お客さまのくらしを豊かにする商品開発、リアル店舗とECサイトの利便性の融合による新たな購買様式の形成などにより「新世代ホームセンター」を創造することでお客さまの利便性向上の実現に取り組んでいます。
 その実現のための原動力は人材の多様性と創造力、自己成長への意欲であると考えています。個人の価値観を尊重した多様な人材が活躍できる環境づくりと、人材育成や自律的な学びへの積極的な支援により、一人ひとりが最大限に能力を発揮できる組織の構築を進めています。従業員のウェルビーイング実現に向けた支援によるエンゲージメントの向上と、従業員の企業価値向上意識の醸成を通じて、持続的な企業の成長と価値の向上を図っています。

事業戦略と連動した人事戦略

1. 人材育成

 中長期的な企業価値の向上を目指す上で、次世代を担う人材の育成は重要な課題と捉えています。そこで当社は2025年までの第3次中期経営計画、2030年の長期事業構想の実現に向け、経営と一体となった人材育成を行っています。具体的には目指すべき人材と現状のギャップを把握するために人材情報の一元管理を進め、2022年度より教育体系を刷新しました。中長期的な人材育成の視点で体系化した教育に加え、選抜した人材に育成を目的とした配転や、プロジェクトや社内タスクへの積極的な登用を行い、成長基盤となる人材を育成しています。

人材情報の一元管理

当社ではタレント・マネジメント・システムを導入し、人材情報の一元管理を行っています。社員の基本情報はもちろん、研修履歴やスキル、本人が目指すキャリアなどの情報を一元管理し、採用から配転、能力開発やポストへの早期抜擢に活用することで、パフォーマンスの最大化を目指しています。また、将来的な経営人材の候補者を世代別にグルーピングし、選抜型の研修や政策的な配転、各種プロジェクトリーダーへの登用などに活用しています。

中長期視点で人を育てる教育体系

 当社では自律的自己育成ができる従業員像を重視し、そのための支援として、全従業員が自ら学べる環境を整備しています。具体的には社内で作成した教育動画をオンラインで視聴できるツールを導入し、いつでも、どこでも、何度でも学べる環境を整えている上、希望者にはビジネススキルを中心とした学習コンテンツを学べる動画サービスの受講料を一部補助することで、業務スキルはもちろん、幅広いビジネススキルを学べます。
 長期事業構想の実現に向けた将来の経営人材の育成においては、世代別にリスト化した候補者に対する通常の階層別研修に加え、他企業との交流やリベラルアーツを学ぶ次世代幹部候補研修に集中して参加させ、広い視野と高い見識を有する人材を途切れることなく輩出できる体系となっています。
 また、専門知識や多様なスキルを持った人材を確保するために、専門教育や資格取得に向けた研修を行っています。特にIT人材の確保は重要課題と捉え、システム子会社では即戦力としてのキャリア採用者とプロパー人材が相互に学ぶ体制を整えています。
 プロパー人材にはキャリア採用者による専門研修やOJT研修はもちろん、動画教育とIT資格取得を通して、着任後3ヶ年でプロジェクト管理ができることを具体的な目標に掲げ、育成に取り組んでいます。
 評価制度については上長からの支援のもと、自ら設定した目標に取り組むことを通じて自主性と成長を促すことができる目標達成評価制度を導入しています。評価内容としては設定した目標の達成度を評価する成果評価と、達成に向けた行動を評価するプロセス評価を設け、結果と過程の両面から評価する制度としています。また、現在の役割に相応しい資質や行動特性の有無を上長が判定するコンピテンシー判定を導入し、本人の褒める点や改善点を明確にし、やる気と成長を引き出す制度としています。
 当社では目標を掲げて効果的な施策を立案し、結果に対して振り返りと改善を重ねていく評価制度を通じて人材育成をおこなっています。

当社の教育体系図

2. 資格取得の支援

 当社の長期事業構想では、「生活快適化総合企業」としてモノを販売する会社から豊かなくらしを総合的に提供する会社への変革を目指しており、資格取得を長期事業構想を実現するための一つの手段として捉えています。ホームセンターには専門性の高い商品分野が多くあり、お客さまの多岐にわたるニーズにお応えするには、高い専門知識とスキルが求められます。単に商品を売るだけではなく、お客さまにくらしのご提案をさせていただくには、接客レベルの向上とスキルアップも必要となります。
 当社では、業務経験を積むことで専門知識を習得するだけでなく、資格取得を通じて高い専門知識とスキル習得が必要であると捉えています。資格取得を人材育成の一環と捉え、自ら学ぶ意識の醸成、積極的な自己啓発ができる風土づくり、自信を持ってお客さま対応ができる従業員の育成を目指しています。
 そこで当社では「DCM資格取得制度」を設け、各種資格の取得を積極的に推奨しています。受験費等の会社補助の拡充、対象者の範囲拡大、対象資格の追加などを実施し、資格を取得しやすい環境を整えています。特に当社の強みであるDIYに関しては積極的に取り組み続けてきたことで、一般社団法人日本DIY・ホームセンター協会によるDIYアドバイザーの認定者数は業界内で最多となり、他社との差別化が図られていることを自負しています。
 また専門性の強化を図るべく、園芸・自転車・ペット・福祉・リフォーム関連などの資格取得支援に関しても拡充しています。一例として、第二種電気工事士の積極的な取得を図っており、モノを販売するだけでなく、専門性の高い知識・スキルを持ち、お客さまに寄り添った提案やアドバイス、施工に至るまで総合的なお手伝いができる、お客さまに頼られるプロとして活躍することを目指しています。また業務システムの効率化、DX化を推進する中で、IT社会で働く上で必要とされる「ITに関する基礎知識」を身につけるために、ITパスポートの積極的な取得を計画的に進めるなど、当社では戦略的に資格取得に向けた働きかけを行っています。

DCM資格取得制度 推奨資格

社内資格・認定制度「DCMアドバイザー」の活用

 当社では「DCM資格取得制度」に加え、基礎的な商品知識に関する理解度を測る、DCM独自の社内資格・認定制度「DCMアドバイザー」を設けています。
 「DCMアドバイザー」の実施目的は、全従業員に商品知識力向上の機会を設けること、継続的に自ら学ぶ姿勢を醸成することです。基礎的な商品知識だけでなく、お客さまのご要望に適切にお応えできる人材の育成を図っています。
 そこで当社では、「DCMアドバイザー」の資格取得の支援として、商品知識集や動画による教育環境を整えています。また、実際に商品を用いて学ぶ商品知識講習会では、座学だけでは社内資格・認定制度「DCMアドバイザー」の活用なく体験を通じた知識・スキルの習得を図っています。
 「DCMアドバイザー」は、2021年度から年1回の社内認定制度として導入し、対象はパートナー社員(パート社員)を含むすべての従業員となります。社内システムを用いて、誰でも簡単に挑戦することが可能です。
 資格認定により自信を持ってお客さま対応ができることから、パートナー社員も積極的に挑戦しており、2022年度では約1,500名(延べ人数)が認定されています。今後も継続して自ら学ぶ組織をつくるための一環として拡大・進化させていきます。

3. 多様な人材活躍の促進

 当社は、従業員一人ひとりがお互いを認め合い、個人を尊重することで、多様性を活かしながら能力を最大限に発揮できるようダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。
 ダイバーシティ&インクルージョンの推進に向けて、①女性の活躍推進 ②シニアの活躍推進 ③社内登用の推進、という大きく3つのアプローチで取り組みを行っています。

女性社員の活躍推進

 ダイバーシティ&インクルージョンを推進するにあたり、特に女性の雇用と活躍は、多様化する市場ニーズへの対応を図る上で必要不可欠と考えています。現在、正社員における女性社員比率は14.3%となっており、近年では約3%伸長しています。ここ数年では、新規入社の半数近くは女性であり、今後、女性社員比率が増加する見込みの中、女性が活躍できる環境づくりが急務と考えています。当社では、結婚、出産、育児などライフイベントが生じた後も長く活躍し続けられるように、キャリアを形成できる環境づくりに努めています。
 そこで、女性の働きやすい環境づくりへ積極的につなげていくため、現状の女性社員の働き方に関する認識と意見収集、実態把握することを目的として、女性社員を対象としたアンケートを実施しました。アンケート結果より、当社として女性活躍推進を図る上での課題を捉えています。
 そのための施策の一つとして、当社では社内の女性社員交流会を実施しています。女性社員同士の新たなコミュニティの形成、キャリア形成やワークライフバランスなど女性社員が抱える不安の払拭、お互いに気付きや共感を得ること、今後の制度や風土改革につなげられる場とすることを目的にしています。
 また社内の交流会とは別に、他企業の女性社員とも交流会を行っています。社内だけでは得られない気づきや刺激を受けることができ、自らのキャリア形成につなげられるような場となっています。
 これらの環境づくりと併行して、すべての管理者を対象にダイバーシティ&インクルージョンや育児支援制度の研修を実施し、管理者を通じて従業員への理解促進を図っています。このように、当社では女性社員の活躍推進のための環境づくり、全従業員の理解促進の2つの側面から取り組んでいます。
 これらを通じて、女性社員が活躍できる環境を整え、管理職に占める女性社員比率は、2030年度で7%以上(2023年3月現在3.2%)を目標に取り組んでいます。

女性社員の活躍推進

シニア人材の活躍推進

 役割定年や定年を迎えた社員が、セカンドキャリアとして今後も自身の強みを活かしながらイキイキと働いていただくために、「役割定年後に実施したい業務」や「得意分野」について、自己申告できる体制を整えています。担当業務は、例えば、今までの経験や知識を活かした社内講師、店舗の改装を担う専門チームや店舗からの相談事に対応するアドバイザーなどがあります。最近では、出店を強化している「ホダカ」での活躍を希望する社員も多くなっています。
 日本の生産年齢人口の減少が予想される中、経験豊富なシニア人材が活躍できる体制をさらに強化していく方針です。

シニア人材の活躍推進

社内登用の推進

 正社員へのキャリアアップを希望する従業員がやりがいを感じ、自己実現を図ることを目的として、パートナー社員から正社員へチャレンジできる社内登用制度を導入しています。
 社内登用制度は能力や意欲がある従業員の活躍の場を広げることで、将来的に店舗の管理者や本社の専門職として期待できる人材を発掘することも目的としています。
 例えば、2008年にパートナー社員から正社員に登用された男性社員は、店舗や本社での経験を積み、現在は店長として活躍しています。同様に、2011年に正社員に登用された女性社員も店舗での経験を積み重ね、2023年からは店長に昇進し、現場の指揮を執っています。
 2022年度は合計40名の従業員が登用試験に合格しています。今後もキャリア形成の一環として、また人材の多様性を高めるため、社内登用を推進していきます。

4. 多様な働き方の推進

社員区分制度

 当社は、個人の価値観やライフスタイル、家族の状況などに合わせて転勤可能な範囲を申請でき、社員一人ひとりが働き方を選択できる社員区分制度を導入しています。社員区分には3つがあり、東日本・中日本・西日本から本人が選択した範囲で勤務する「ブロック」、勤務地の範囲を限定できる「エリア」、転居転勤がない「地域」があります。1年に一度、社員区分を申請できるため、個人の事情が変化した場合も働き方の変更が可能な制度になっています。
 さらに、全国どこでも勤務可能なナショナル社員区分もあり、これにより様々な地域の文化などに触れることで経験の幅を広げ、社員個人の成長につながることを期待する制度となっています。
 また、特別な理由(看病・介護や育児等)により転居転勤が困難となった場合に、一時的に勤務地を本人が希望する地域とすることが認められる「勤務地一時限定制度」を導入しています。認定期間中は、認定前の処遇が維持されるため、社員は安心して制度を利用することができます。

ブロック、エリアの範囲

育児・介護支援制度

 当社の「育児・介護支援制度」は法定を上回る制度を導入しており、従業員全員が安心して出産や育児、家族の介護ができるよう、利用しやすい環境づくりに取り組んでいます。2022年度は男性従業員26名が育児休業を取得し、会社独自の育児休暇制度の取得者数と合わせた男性育児休業・休暇取得率はここ数年で大きく伸長し60.5%となりました。近年、ワークライフバランスの重要性が認識され、多様な価値観を尊重しながら、従業員それぞれの自己実現をさらに後押しできるような取り組みや制度を今後も検討していきたいと考えています。

健康経営の取り組み

 当社は、経営理念である「Do Create Mystyle くらしの夢をカタチに」を実現し、お客さまとともに豊かなくらしを創造するためには、従業員自身が健康であることが必要不可欠と考えています。
 そのための取り組みとして、長時間労働の抑止はもちろん、健康診断の受診率100%を基本として従業員全員が受診できるように各店舗での検診や日程管理を行っています。生活習慣病予防に向けた特定保健指導についても、健康増進を意識する機会として積極的に推奨し、勤務時間内での受診や勤務場所でのオンライン受診など、従業員が受診しやすい環境を整えた結果、従業員の受診率は年々向上しています。
 またストレスチェックについては、従来50人以上の事業場のみで実施していましたが、事業場単位での状況把握や改善を目的に、2022年度よりすべての事業場でストレスチェックを実施しています。
 2022年度の高ストレス者の割合は12.6%であり、2025年度には10%以下にすることを目指しています。
 今後も、従業員一人ひとりが心身ともに健康で働く意欲に満ちた存在となるよう、健康経営への取り組みを積極的に推進していきます。

健康経営推進体制
※健康経営宣言:https://www.dcm-hldgs.co.jp/grp/company/health.html

DCM(株)人的資本経営に関わる数値状況

項目 2023年度 数値
育成 教育・学習時間 133,411時間
階層別研修参加者数 692人
エンゲージメント エンゲージメント(eNPS)※1 -57.4
有給休暇平均取得日数 8.92日
流動性 勤続年数 20.30年
離職率 4.38%
ダイバーシティ 女性正社員比率 15.53%
女性管理職比率 3.20%
女性活躍に関する研修時間、および女性社員交流会の実施時間 533時間
男性育児休業取得率 73.00%
男女賃金差異(正社員)※2 77.90%
男女賃金差異(正社員以外)※2 90.50%
男女賃金差異(全従業員)※2 56.5%
健康・安全 健康診断実施率 99.50%
労働慣行 人権に関する研修時間 1,232時間
労使協議会等の開催 18回

※1 エンゲージメントは2022年度実施数値(ホダカ(株)、DCMアドバンスド・テクノロジーズ(株)を含む)
※2 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の基準に基づき算出