人的資本経営
事業戦略と連動した人事戦略
当社は「Do Create Mystyle くらしの夢をカタチに」の経営理念のもと、豊かなくらしを総合的に提供する「生活快適化総合企業」への変革を目指しています。役割を明確にした店舗戦略、お客さまのくらしを豊かにする商品開発、リアル店舗とECサイトの利便性の融合による新たな購買様式の形成などにより「新世代ホームセンター」を創造することでお客さまの利便性向上の実現に取り組んでいます。
その実現のための原動力は人材の多様性と創造力、自己成長への意欲であると考えています。個人の価値観を尊重した多様な人材が活躍できる環境づくりと、人材育成や自律的な学びへの積極的な支援により、一人ひとりが最大限に能力を発揮できる組織の構築を進めています。従業員のウェルビーイング実現に向けた支援によるエンゲージメントの向上と、従業員の企業価値向上意識の醸成を通じて、持続的な企業の成長と価値の向上を図っています。

1. 人材育成
中長期的な企業価値の向上を目指すうえで、次世代を担う人材の育成は重要な課題と捉えています。そこで当社は2025年度までの第3次中期経営計画、2030年の長期事業構想の実現に向け、経営と一体となった人材育成を行っています。具体的には目指すべき人材と現状のギャップを把握するために人材情報の一元管理を進め、中長期的な人材育成の視点で体系化した教育に加え、選抜した人材に育成を目的とした配転や、プロジェクトや社内タスクへの積極的な登用を行い、成長基盤となる人材を育成しています。
人材情報の一元管理
当社ではタレント·マネジメント·システムを活用し、人材情報の一元管理を行っています。社員の基本情報はもちろん、研修履歴やスキル、本人が得意としている領域や目指すキャリアなどの情報を一元管理し、採用から配転、能力開発やポストへの早期抜擢に活用することで、パフォーマンスの最大化を目指しています。また、将来的な経営人材の候補者を世代別にグルーピングし、選抜型の研修や政策的な配転、各種プロジェクトリーダーへの登用などに活用しています。
中長期視点で人を育てる教育体系
当社では自律的自己育成ができる従業員像を重視し、そのための支援として、全従業員が自ら学べる環境を整備しています。具体的には社内で作成した教育動画をオンラインで視聴できるツールを活用し、いつでも、どこでも、何度でも学べる環境を整えています。動画で学べるということは社内に浸透してきており、直近1年間での月平均利用率は75.4%となっています。希望者にはビジネススキルを中心とした学習コンテンツを学べる社外の動画サービスの受講料を一部補助することで、業務スキルはもちろん、幅広いビジネススキルを学びやすい環境を整えています。
ビジネス環境の変化が激しい時代となり、企業の舵取りを担うトップマネジメントの役割と責務は大きくなっています。当社では経営人材を計画的に育成するカリキュラムとして、トップマネジメント育成プログラムを開始しました。対象者には自己革新意欲の醸成を促し、経営視点での育成を強化しています。
2024年度よりプログラムを刷新し、求めるスキルや世代に応じて3階層のクラスを設け、クラスごとに2年間の長期的な研修を行っています。研修の参加については自薦や他薦にてエントリーした社員から選抜審査を経て決定し、多様な人材が自発的に参加できるようにしています。研修を通じて未来を切り拓く人材を計画的に育成し、企業価値の向上と持続的な成長に繋げています。
評価制度については上長からの支援のもと、自ら設定した目標に取り組むことを通じて自主性と成長を促すことができる目標達成評価制度を導入しています。評価内容としては設定した目標の達成度を評価する成果評価と、達成に向けた行動を評価するプロセス評価を設け、結果と過程の両面から評価する制度としています。また、現在の役割に相応しい資質や行動特性の有無を上長が判定するコンピテンシー判定を導入し、本人の褒める点や改善点を明確にし、やる気と成長を引き出す制度としています。
当社では目標を掲げて効果的な施策を立案し、結果に対して振り返りと改善を重ねていく評価制度を通じて人材育成をおこなっています。

資格取得の支援
ホームセンターには専門性の高い商品が多くあり、お客さまの多岐にわたるニーズにお応えするには、高い専門知識とスキルが求められます。単に商品を売るだけではなく、お客さまにくらしのご提案をさせていただくには、接客レベルの向上とスキルアップも必要となります。
そこで当社では「DCM資格取得制度」を設け、各種資格の取得を積極的に推奨しています。受験費等の会社補助の拡充、対象者の範囲拡大、対象資格の追加などを実施し、資格を取得しやすい環境を整えています。特に当社の強みであるDIYに関しては積極的に取り組み続けてきたことで、一般社団法人日本DIY·ホームセンター協会によるDIYアドバイザーの認定者数は業界内で最多の1,238 人(2024 年5 月末現在)となり、他社との差別化が図られていることを自負しています。
また、専門性の強化を図るべく、園芸·自転車·ペット· 福祉·リフォーム関連などの資格取得支援に関しても拡充しています。一例として、第二種電気工事士の積極的な取得を図っており、モノを販売するだけでなく、専門性の高い知識·スキルを持ち、お客さまに寄り添った提案やアドバイス、施工に至るまで総合的なお手伝いができる、お客さまに頼られるプロとして活躍することを目指しています。また、業務システムの効率化、DX 化を推進する中で、IT 社会で働くうえで必要とされる「ITに関する基礎知識」を身につけるために、ITパスポートの積極的な取得を計画的に進めるなど、当社では戦略的に資格取得に向けた働きかけを行っています。
DCM資格取得制度 推奨資格

社内資格・認定制度「DCMアドバイザー」の活用
当社では「DCM資格取得制度」に加え、基礎的な商品知識に関する理解度を測る、DCM独自の社内資格・認定制度「DCMアドバイザー」を設けています。「DCMアドバイザー」の実施目的は、全従業員に商品知識力向上の機会を設けること、継続的に自ら学ぶ姿勢を醸成することです。基礎的な商品知識だけでなく、お客さまのご要望に適切にお応えできる人材の育成を図っています。
そこで当社では、「DCMアドバイザー」の資格取得の支援として、商品知識集や動画による教育環境を整えています。また、実際に商品を用いて学ぶ商品知識講習会では、座学だけではなく体験を通じた知識・スキルの習得を図っています。
「DCMアドバイザー」は、2021年度から年1回の社内認定制度として導入し、対象はパートナー社員(パート社員)を含む全ての従業員となります。社内システムを用いて、誰でも簡単に挑戦することが可能です。
資格認定により自信を持ってお客さま対応ができることから、パートナー社員も積極的に挑戦しており、制度開始以降、年々、受検者および認定者数は増加し、2023年度では延べ約5,500人が認定されています。
今後も継続して自ら学ぶ組織をつくるための一環として拡大・進化させていきます。
DCMアドバイザー 受検者数と認定者数(延べ人数)

2. 多様な人材活躍の推進
当社は、従業員一人ひとりがお互いを認め合い、個人を尊重することで、多様性を活かしながら能力を最大限に発揮できるようダイバーシティー&インクルージョンを推進しています。
女性社員の活躍推進
ダイバーシティー&インクルージョンを推進するにあたり、特に女性の雇用と活躍は、多様化する市場ニーズへの対応を図るうえで必要不可欠と考えています。2024年3月の女性社員の人数は658人、正社員における女性社員比率は13.3%となっていますが、直近3年度における新卒入社者の半数近くが女性であり、今後も女性社員比率が拡大していくことが想定される状況において、女性が活躍できる環境づくりは急務と考えています。当社では、結婚・出産・育児などライフイベントが生じた後も長く活躍し続けられるよう、キャリアを形成できる環境づくりに努めています。女性が働きやすい環境づくりの施策として、当社では社内の女性社員交流会を実施しています。女性社員同士の新たなコミュニティーの形成、キャリア形成やライフプランなど女性社員が抱える不安の払拭、お互いに気づきや共感を得ること、今後の制度や風土改革に繋げられる場とすることを目的にしています。また、社内の交流会とは別に、他企業の女性社員とも交流会を行っています。社内だけでは得られない気づきや刺激を受けることができ、自らのキャリア形成に繋げられるような場となっています。2023年度における女性社員交流会の参加人数は延べ283人となりました。2024年度は新たな取り組みとして、他企業で活躍されている女性社員を社外講師としてお招きし、女性キャリアアップセミナーを実施しました。セミナーには114人の女性社員が自発的に参加し、自身のキャリア形成について考える場となりました。
これらの環境づくりと併行して、全ての管理者を対象にダイバーシティー&インクルージョンや育児支援制度の研修を実施し、管理者を通じて従業員への理解促進を図っています。このように、当社では女性社員の活躍推進のための環境づくり、全従業員の理解促進の2つの側面から取り組んでいます。これらを通じて、女性社員が活躍できる環境を整え、管理職に占める女性社員比率は、2030年度で7%以上を目標に取り組んでいます(2024年3月時点3.4%)。

シニア人材の活躍推進
社内で様々なキャリアや経験を積み重ねてきた社員に、セカンドキャリアとして今後も自身の強みを活かしながらイキイキと活躍し続けてもらうために、「今後実施したい業務」や「得意分野」について、自己申告できる体制を整えています。担当業務は、例えば、今までの経験や知識を活かした社内講師、店舗の改装を担う専門チームや店舗からの相談事に対応するアドバイザーなどがあります。最近では住宅設備の補修やリフォームを担う住まいるヘルパー事業において、社内職人としての活躍を希望する社員も多くなっています。
日本の生産年齢人口の減少が予想される中、経験豊富なシニア人材が活躍できる体制をさらに強化していく方針です。

社内登用の推進
正社員へのキャリアアップを希望する従業員がやりがいを感じ、自己実現を図ることを目的として、パートナー社員から正社員へチャレンジできる社内登用制度を導入しています。
社内登用制度は能力や意欲がある従業員の活躍の場を広げることで、将来的に店舗の管理者や本社の専門職として期待できる人材を発掘することも目的としています。例えば、2008年度にパートナー社員から正社員に登用された男性社員は、店舗や本社での経験を経て2018年度から店長を担い、現在は本社部署のマネジャーとして活躍しています。同様に、2011年度に正社員に登用された女性社員も店舗での経験を積み重ね、2023年度からは店長に昇進し、現場の指揮を執っています。
2023年度は合計16人の従業員が正社員登用試験に合格しています。今後もキャリア形成の一環として、また人材の多様性を高めるため、社内登用を推進していきます。
副業制度
2024年1月より、社員のキャリア形成や自己成長を促進することを目的に、許可制にて副業を認める制度を導入しています。社内では得られない知識・スキルを獲得する機会を創出し、社員の成長や本業への相乗効果、イノベーションの促進に繫がることを期待しています。
3. 多様な働き方の推進
年間休日日数の充実
当社では、ワークライフバランスの充実や心身の健康増進を目的として、2024年度から社員の年間休日日数を8日増やし、122日としています。休日は健全に働き続けるために大切な要素であるため、制度の充実を図っています。
異動区分制度
個人の価値観やライフスタイル、家族の状況などに合わせて転勤可能な範囲を申請でき、社員一人ひとりが働き方を選択できる異動区分制度を導入しています。異動区分には3つの区分があり、全国での勤務が可能な「エリアフリー」、勤務地を一定の範囲内とする「エリア」、社員の居住地から通勤可能な範囲内とする「地域」があります。
また、特別な理由(看病・介護や育児等)により転居転勤が困難となった場合に、一時的に勤務地を本人が希望する地域とすることが認められる「勤務地一時限定制度」を導入しています。認定期間中は、認定前の処遇が維持されるため、社員は安心して制度を利用することができます。
各エリアの範囲

マイシティ制度
働くうえでの拠点を選択するマイシティ制度を2024年度より導入しています。これにより全国転勤が可能としている社員においても、本人が拠点としたい場所を考慮した人事異動ができ、社員個人の希望を尊重しながら活躍できる制度としています。
また、勤務先がマイシティから離れた場所であった場合、生活や帰郷のサポートを目的とした手当を支給する制度を導入しており、実際にマイシティから離れて勤務する社員が安心して働けるように支援しています。
育児・介護支援制度
当社の育児・介護支援制度は法定を上回る内容の制度を導入しており、従業員全員が安心して出産や育児、家族の介護ができるよう、利用しやすい環境づくりに取り組んでいます。2024年度からはイクボス・ケアボスの認定制度を導入し、従業員が上司に相談しやすい職場環境の整備に取り組んでいます。
2023年度は男性従業員43人が育児休業および会社独自の育児休暇を取得し、男性育児休業・休暇取得率は69.4%となり、ここ数年で大きく伸長しています。
従業員の多様な価値観を尊重しながら、それぞれの自己実現をさらに後押しできるよう、今後も多様な働き方の推進に取り組んでいきます。
健康経営の取り組み
当社は、経営理念である「Do Create Mystyle くらしの夢をカタチに」を実現し、お客さまとともに豊かなくらしを創造するためには、従業員自身が健康であることが必要不可欠と考えています。
そのための取り組みとして、長時間労働の抑止はもちろん、健康診断の受診率100%を基本として従業員全員が受診できるように各店舗での検診や日程管理を行っています。生活習慣病予防に向けた特定保健指導についても、健康増進を意識する機会として積極的に推奨し、勤務時間内での受診や勤務場所でのオンライン受診など、従業員が受診しやすい環境を整えた結果、従業員の受診率は年々向上しています。
またストレスチェックについては、従来50人以上の事業場のみで実施していましたが、事業場単位での状況把握や改善を目的に、2022年度よりすべての事業場でストレスチェックを実施しています。
2023年度の高ストレス者割合は13.3%であり、2027年度には10%以下にすることを目指しています。
今後も、従業員一人ひとりが心身ともに健康で働く意欲に満ちた存在となるよう、健康経営への取り組みを積極的に推進していきます。

DCM(株)人的資本経営に関わる数値状況
項目 | 2023年度 数値 | |
---|---|---|
育成 | 教育・学習時間 | 133,411時間 |
階層別研修参加者数 | 692人 | |
エンゲージメント | エンゲージメント(eNPS)※1 | -57.4 |
有給休暇平均取得日数 | 8.92日 | |
流動性 | 勤続年数 | 20.30年 |
離職率 | 4.38% | |
ダイバーシティ | 女性正社員比率 | 15.53% |
女性管理職比率 | 3.20% | |
女性活躍に関する研修時間、および女性社員交流会の実施時間 | 533時間 | |
男性育児休業取得率 | 73.00% | |
男女賃金差異(正社員)※2 | 77.90% | |
男女賃金差異(正社員以外)※2 | 90.50% | |
男女賃金差異(全従業員)※2 | 56.5% | |
健康・安全 | 健康診断実施率 | 99.50% |
労働慣行 | 人権に関する研修時間 | 1,232時間 |
労使協議会等の開催 | 18回 |
※1 エンゲージメントは2022年度実施数値(ホダカ(株)、DCMアドバンスド・テクノロジーズ(株)を含む)
※2 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の基準に基づき算出