TCFD提言に沿った情報開示 TCFD

TCFDへの賛同

DCMグループは気候変動への対応を経営戦略における重要課題として位置づけ、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を2023年に表明しました。今後は、TCFDが推奨する枠組み(「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」)に沿って情報開示を行い、気候変動への取り組みを推進することで脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

TCFDについて

2015年に採択されたパリ協定を受け、金融業界を中心に気候変動が投融資先の事業活動に与える影響を評価する動きが世界的に広まりました。そうした動きを背景として、G20の要請を受けた金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するため設立されたのがTCFDです。TCFDは企業等に対して、気候変動関連リスク及び機会に関する4つの項目(「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」)について開示することを推奨しています。

※TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)

ガバナンス

当社では、気候変動問題はサステナビリティに関わる重要な課題の1つと考え、取締役会における監督とサステナビリティ委員会を中心とするガバナンス体制を構築しています。

取締役会は、気候変動問題、SDGsの重点課題(マテリアリティ)を含むサステナビリティに関わる取り組みに対し、年1回以上、サステナビリティ委員会より報告を受け、進捗状況の監督・評価を行うとともに、適切に方針・取り組みの見直しを行います。

サステナビリティ委員会は、当社代表取締役社長を委員長として、サステナビリティ担当役員、SDGsの重点課題(マテリアリティ)の責任者が委員として出席し、年2回以上開催いたします。サステナビリティ委員会では、気候変動問題をはじめ、サステナビリティに関する最新動向の調査・研究、進捗状況の確認と取り組み方針についての審議を行い、取締役会へ報告・提案を行います。

ガバナンス体制図

ガバナンス体制図

戦略

当社では、気候変動がもたらす長期の「リスク」と「機会」を明確にし、「リスク」を低減して「機会」を拡大するための事業戦略立案に向けて、シナリオ分析を行っています。
今回は、2021年10~11月に開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の成果文書に明記されている、産業革命期からの地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑える目標が世界的に主流になっていることを踏まえ、1.5℃目標に対応した分析を実施することにいたしました。
具体的には、IPCCのRCP8.5・RCP2.6シナリオや、IEAのWorld Energy Outlook 2021で示されているNZE2050・SDS・STEPSなどのシナリオをはじめ、政府や国際機関が発行した将来予測に関するレポートなどを参考に、 「脱炭素シナリオ(1.5℃~2℃の世界)」と、「温暖化進行シナリオ(2.7℃~4℃の世界)」の2つのシナリオを設定し、 気候変動がもたらす移行リスク(政策・法規制、市場、評判)、物理リスク(急性、慢性)、ならびに気候変動への適切な対応による機会(製品及びサービス、市場、レジリエンス)を分析いたしました。

※IPCC:気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)
RCP:地球温暖化に影響を及ぼす温室効果ガス(GHG)濃度の将来シナリオ(Representative Concentration Pathway)
IEA:国際エネルギー機関(International Energy Agency)
NZE:2050年ネットゼロ排出シナリオ(1.5℃)(Net Zero Emissions by 2050 Scenario)
SDS:持続可能な開発シナリオ(Sustainable Development Scenario)
STEPS:公表政策シナリオ(Stated Policies Scenario)

シナリオ分析について

リスク

TCFDで気候変動に伴い想定されるリスクは、以下の2種類。 ①政策・法規制、市場、レピュテーションの変化などがもたらす「移行リスク」
②異常気象の激化による資産の損傷といった「物理リスク」
DCMグループにおいては、2℃(または1.5℃)の世界では「移行リスク」を、4℃の世界では「物理リスク」の影響を重視して検討。

機会

気候変動は、消費者の環境意識の高まりやライフスタイルの変化を引き起こすと予測しており、DCMグループの事業特性上、消費者に訴求する機会になると想定。

前提条件

対象期間 2020年度~2050年度
対象範囲 2020年度時点でDCMグループが擁する全拠点・全事業
算定条件 ・公開されている気候変動シナリオ(IPCC・IEA等)を使用。
・定性分析の対象事項は、各関連部署の担当者を集めた検討会の中で選定。
・リスクについては、主にリスクが発生した際のコスト増分を検討。
・機会については、主に機会が発生した際の売上増分を検討。
・将来的なエネルギー・道路交通等のインフラ整備による影響は考慮していない。

シナリオ分析の結果一覧

気候変動のリスクと機会が事業に与えるインパクトを分析し、 そのインパクトの大きさを矢印で表記しています。それらへの対応策をSDGsの重点課題と紐づけて規定し、当社におけるサステナビリティ経営の一環として、気候変動対策にも取り組んでまいります。

移行リスク

移行リスクに関しては、「1.5℃目標」に向けて様々な政策や法規制が導入され、市場や評判の変化が起こる「脱炭素シナリオ(1.5℃~2℃の世界)」に重点をおいて検討いたしました。

物理リスク

物理リスクに関しては、「脱炭素シナリオ(1.5℃〜2℃の世界)」では、温暖化の進⾏により災害をもたらす⼤⾬などの極端な気象現象の発生による影響を、「温暖化進⾏シナリオ(2.7℃〜4℃の世界)」では、気温上昇による店舗立地・設備面への影響のみならず、林業・農業等への被害がもたらす当社への影響、様々な感染症の発生による事業への影響等を考慮いたしました。

機会

機会に関して、「脱炭素シナリオ(1.5℃~2℃の世界)」では、消費者の環境意識の高まりから暑さ対策商品や防災商品の需要が拡大するとともに、モノを補修しながら資源を大切に使うことへの共感の高まり、DIY・エコ関連商品が販売伸長するだけでなく、ホームセンターの中心的役割であるDIY・リフォーム市場そのものが拡大すると想定いたしました。

リスク管理

リスク管理プロセス図

リスク管理プロセス図

当社では、リスク管理規定に基づき、内部統制委員会においてグループ全体のリスクを網羅的・包括的に管理し、リスク並びに損害の発生を最小限に止めるため、啓発・指導・教育等を行っております。気候変動リスクについても、このリスク管理体制のもとで管理しております。
各部署は、毎年、リスクを洗い出し、リスクの影響度・発生頻度を考慮してリスクを評価し、対応策とともにリスク評価表にまとめて、内部統制委員会に提出します。このリスク評価表には、気候変動リスクも含まれます。内部統制委員会は、各部署から提出されたリスク評価と対策をもとに、グループ全体のリスク状況を網羅的に把握します。
グループ全体の重大なリスクについては、「リスク内容」「リスクが発生した際の影響度」「リスクの発生頻度」等を総合的に評価して、リスクを回避・低減・移転・受容する判断を行っております。
こうしたリスク管理の状況や重大なリスクの判断に関しては、内部統制委員会よりサステナビリティ委員会に報告・共有した上で、毎年、取締役会に報告し、取締役会にて審議・監督しております。内部統制委員会では取締役会での審議後、リスク管理体制や対応策のモニタリングを継続的に実施しております。

指標及び目標

2021年10~11月に開催されたCOP26の成果文書に、 産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑える努力をする旨が明記され、 この「1.5℃目標」を目指すことは世界的潮流となり、企業に求められる責任となっています。 今回実施した長期視点のシナリオ分析では、気候変動による政策・法規制や市場の影響、異常気象の被害等による事業への影響の大きさが明確になりました。DCMグループは、気候変動によるリスク拡大を防ぐために、 気温上昇を1.5℃に抑える取り組みに注力してまいります。

Scope1・2の排出量

2020年度(2020年3月~2021年2月)におけるDCMグループのGHG排出量は、右欄のとおりです。
DCMグループの全拠点・全事業を対象に、GHGプロトコルのガイドラインに則り、算定いたしました。
Scope1(直接排出) 12,057 t
Scope2(間接排出) 96,752 t
Scope1+2(合計値) 108,809 t

Scope1・2の削減目標

パリ協定(世界の平均気温の上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準(Well Bellow2℃)に抑え、また1.5℃に抑えることを目指す)が求める水準と整合したGHG排出削減目標であるSBT(Science Based Targets、科学的根拠に基づく目標)に則り、毎年4.2%の削減を目指してまいります。

Scope3については算出の精度を高めるとともに、お取引先さまとの協働による削減を検討してまいります。

DCMグループは、世界の「1.5℃目標」の実現に貢献するため、またお客さまのために、新しい商品・サービスを創造し、変化に柔軟に対応しながら、地域と団結し、社会に奉仕する、なくてはならない企業のカタチを追求してまいります。