2018.05.23 住宅の日差し対策〜日よけや、輻射熱、紫外線対策など〜
「日当たりがいい」。そのこと自体は、住まいや暮らしにとって決して悪いことではありません。日光が当たることで建物や生活空間が乾燥がちになり、湿気を好むカビや病原性のある細菌、害虫などを棲みにくくさせ、衛生的な環境を維持することが簡単になるためです。
ただ、特に日本上空のオゾン層のオゾン濃度が低くなりがちな5月以降、太陽高度の高くなる正午前後に降り注ぐ、強い「紫外線」(主にUV-A波)に対しては、少し注意深くあらねばなりません。
「日焼け」と聞くと私たちの皮膚が濃く(黒く)なるほうの変化をイメージしがちですが、おっしゃる通り、おうちの壁や床などが薄く(白く)退色、色あせてしまうほうの「日焼け」もあります。いずれも日光(太陽光)に含まれる「紫外線」の影響によるものです。
そもそも太陽からの光には、私たちにとって目に見える光(可視光線)のほか、「赤外線」「紫外線」「X線」「ガンマ線」などが含まれています。「お日様、当たって、あったかい(熱い)」と感じるのは、このうちの「赤外線」による効果です。「赤外線」は「可視光線」よりも波長が長いもので、「可視光線」よりも波長の短いものが「紫外線」と呼ばれています。
「紫外線」は、波長の長いものからA波(UV-A)、B波(UV-B)、C波(UV-C)と大別されますが、B波とC波はオゾン層でカットされてしまうため、ほとんど地上には届きません。ちなみに「紫外線」よりも波長の短い「X線」「ガンマ線」も地上に届くことはありません。私たちの生活に影響を与える「紫外線」とは、主にA波とB波の一部を指しています。
私たちの皮膚を黒くする(日焼け=サンバーン)原因になるのは「紫外線B波」です。強力なエネルギーで皮膚表面の細胞を傷つけ、炎症を起こさせます。ただ、B波には「遮られやすい」性質があり、ガラス一枚挟むだけでも大幅に減らすことができます。
住まいを荒らす「紫外線」は主に「紫外線A波」のほうで、オゾン層を突き抜け大気の層も越え、窓ガラスや薄いカーテン程度までも透過してしまうために屋外を100とした「紫外線A波」は、屋内でも80程度維持されてしまっているほどだと言われています。
このA波が引き起こす化学反応によって、家の中のフローリングやじゅうたん、畳といった「床」、ビニールクロスなどの「壁」、そして木材や合皮などによる「家具」、プラスチックなどによる「家電」、またカーテンなど「ファブリック類」が変色、退色してしまうことは、特に日当たりがいい住まいでは、しばしば起こってしまうのです。ただ残念なことにこれら「変色、退色」は化学変化ゆえにカビや汚れなどと異なり、洗ったり掃除をしたりすることで元に戻すということが基本的にできません。
では、通常の生活のなかで、この「紫外線」による悪影響をできるだけ小さくするにはどうしたらいいのでしょうか。
一つは「紫外線」家の中に入り込む大きな入り口である「窓ガラス」の内外に、カーテンに加えもう一つ「紫外線」を遮るフィルターを設けること。屋外に「サンシェード」を設置するのも、その一手でしょう。昔ながらの知恵にもありますが、内外問わず「日除け」や「すだれ」を設ける方法もあります。
また太陽光に含まれる「赤外線」が屋内の気温を上げ、寝苦しさの元になったりエアコンの効きを悪くする側面もあります。「窓ガラス」の面したテラスやベランダなどに照り返し予防の「木製すのこ」や「人工芝」を敷くことで、赤外線による輻射熱が蓄熱してしまう度合いを抑えたいところです。また、窓ガラスや建物壁面の蓄熱予防に、ゴーヤやアサガオなどつる性の「グリーンカーテン」を育て、日除けのほか植物の葉の蒸散による気化熱による気温低下を期待する方法もあります。
それぞれの住まいの状況やライフスタイルから、とりいれやすい対策を講じてみてはいかがでしょうか。